柔軟な働き方の推進施策の1つ|フレックスタイム制度
近年、働き方改革の一環として「フレックスタイム制度」を導入する企業が増えています。特に、2025年の育児・介護休業法改正により、柔軟な働き方の推進が求められる中でフレックスタイム制度の導入を検討する企業も多いのではないでしょうか。この記事では、フレックスタイム制度の基本、導入のメリット・デメリット、成功事例、導入手順、そして導入時の注意点について詳しく解説します。
1. フレックスタイム制度とは?
フレックスタイム制度とは、一定の清算期間内で定められた総労働時間を満たすことを条件に、労働者が始業・終業時刻を自由に設定できる労働時間制度です。これにより、従業員は業務量や個人の都合に合わせて柔軟に働くことが可能となります。
【フレックスタイム制度の基本構成要素】
- コアタイム(※)
全従業員が必ず勤務しなければならない時間帯。例えば、10時から15時までをコアタイムと設定することで、この時間帯は全員が勤務し、会議や打ち合わせを行いやすくします。 - フレキシブルタイム
労働者が自由に始業・終業時刻を設定できる時間帯。例えば、7時から10時、15時から20時までをフレキシブルタイムとすることで、個々のライフスタイルや業務内容に応じた柔軟な働き方が可能となります。 - 清算期間
一定期間内(通常は1ヶ月)における総労働時間を設定し、その期間内で労働時間を調整します。例えば、1ヶ月の清算期間内で160時間の労働時間を設定し、日々の労働時間を柔軟に調整することができます。
※コアタイムを設定しない場合はフルフレックスとなります。
2. フレックスタイム制度の導入状況
日本におけるフレックスタイム制度の導入状況は、企業規模や業種によって異なります。厚生労働省が実施した令和4年就労条件総合調査によると、全企業のうちフレックスタイム制を導入している企業は8.2%、労働者割合では10.3%と報告されています。特に、従業員数が多い企業ほど導入率が高く、1000人以上の企業では18.0%、300~999人規模では9.3%、100~299人規模では4.4%となっています。また、業種別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」や「情報通信業」での導入率が高い傾向があります。
また、欧米諸国では日本よりもフレックスタイム制度の導入が進んでおり、特に北欧諸国ではフレックスタイムの活用が広がっています。例えば、スウェーデンでは全体の40%以上の企業がフレックスタイムを採用しており、働き方の多様化が進んでいます。
3. フレックスタイム制度導入のメリット
企業側のメリット
- 生産性の向上
従業員が最も生産性を発揮できる時間帯に働くことができるため、業務効率が向上します。例えば、朝型の人は早朝から、夜型の人は遅めの時間から業務を開始することで、集中力を高めることができます。 - 優秀な人材の確保・定着
柔軟な働き方を提供することで、育児や介護などの事情を抱える人材や、多様な働き方を求める人材の採用・定着につながります。特に、近年の働き方改革や多様性推進の流れの中で、柔軟な労働環境を整備することは企業の競争力向上にも寄与します。 - オフィスコストの削減
通勤時間の分散により、オフィスの混雑が緩和され、スペースの有効活用や電力・設備の効率的な使用が可能となります。これにより、オフィスの維持管理コストの削減が期待できます。 - 企業のブランド向上
柔軟な働き方を提供することで、働き方改革に前向きに取り組んでいる企業であるというアピールに繋がり、企業のイメージ向上が期待できます。採用活動などにおいても、求職者からの関心を集めやすくなると考えられます。 - 法改正への対応
育児・介護休業法の改正に伴い、フレキシブルな勤務形態の導入が求められる中で、上記のメリットも含めながら適切に対応することが可能となります。
従業員側のメリット
- ワークライフバランスの向上
個々の生活スタイルや家庭の事情に合わせて勤務時間を調整できるため、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。例えば、子供の送り迎えや介護の時間に合わせて勤務時間を設定することが可能です。 - 通勤ストレスの軽減
ラッシュアワーを避けた通勤が可能となり、通勤時間の短縮やストレスの軽減につながります。これにより、心身の健康維持や業務への集中力向上が期待できます。 - 効率的な時間管理
自分のペースで業務を進めることができるため、集中力が高まり、業務効率が向上します。また、業務とプライベートの時間を柔軟に配分できるため、全体的な時間管理能力の向上にもつながります。 - 育児・介護との両立がしやすい
家庭の事情に応じて勤務時間を調整できるため、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなることが期待できます。
4. フレックスタイム制度導入のデメリットと対策
フレックスタイム制度には多くのメリットがありますが、一方で導入・運用に際していくつかのデメリットも存在します。以下に、具体的なデメリットとその一般的な対策についてよくある事例を元に解説します。
1. 業務の統制が難しくなる
フレックスタイム制度を導入すると、従業員が異なる時間帯に働くことになるため、チーム全体の業務統制が難しくなります。特に、プロジェクトの進行管理や、複数メンバーが関与する業務では、勤務時間のズレが生産性の低下を招くことがあります。
対策:
- コアタイムの適切な設定(例:10:00〜15:00)で最低限の業務時間を確保する
- タスク管理ツール(Trello、Asana、JIRA など)を活用し、業務進捗を可視化する
- リモートワーク併用時はオンライン会議を定期開催し、情報共有を強化する
2. 勤怠管理が煩雑になる
労働時間が柔軟になることで、出退勤の管理が従来よりも複雑化します。特に、長時間労働の抑制や、労働時間の適正な記録が課題になります。また、清算期間を設ける場合、期間内で労働時間が適切に調整されているかの管理が必要です。
対策:
- 勤怠管理システムの導入
- 月単位ではなく、週単位で労働時間の調整状況を確認する
- マネージャーやリーダーが従業員の労働時間を適宜チェックし、過重労働を防ぐ
3. コミュニケーション不足が発生しやすい
異なる時間帯に働く従業員が増えることで、チーム内のコミュニケーションが不足し、情報共有が滞る可能性があります。特に、新入社員や異動してきた社員にとっては、周囲との接点が少なくなり、孤立感を感じることもあります。
対策:
- オンラインミーティングやチャットツール(Slack、Microsoft Teams など)を活用し、情報共有の場を確保
- バーチャルオフィスツール(Gather.Town など)を導入し、雑談ができる環境を整える
- 定期的なオフラインミーティングやチームビルディングの機会を設ける
4. 労働時間の偏りが発生する
清算期間内での労働時間調整が可能なため、一部の従業員が「最初の週は短時間労働、後半は長時間労働」など、不規則な働き方をしてしまうことがあります。また、締め切り直前に労働時間を増やすケースも考えられます。
対策:
- 月単位ではなく「週単位」での労働時間管理を推奨
- 「労働時間の上限ルール」を設定し、極端な働き方を制限
- 適切な労働時間配分を促すため、マネージャーが進捗を定期的にチェック
5. 人事評価が難しくなる
フレックスタイム制度では、従業員の勤務時間が異なるため、従来の「出勤時間の長さ=頑張っている」という評価基準が通用しません。成果や業績を適正に評価する仕組みが求められます。
対策:
- 「労働時間」ではなく「成果ベース」の評価制度を導入する
- 目標管理(OKR、MBOなど)を導入し、個々の成果を明確にする
- 定期的な1on1ミーティングを実施し、仕事の進捗や課題を適宜共有する
6. 社内文化や風土の変化に時間がかかる
フレックスタイム制度を導入しても、上司やチームメンバーが固定時間で働いていると、「本当にフレックスを使っていいのか?」と不安に感じる従業員もいます。また、制度が形骸化し、一部の従業員しか利用しないケースもあります。
対策:
- 経営陣や管理職も積極的にフレックスタイム制度を利用し、社内文化として定着させる
- フレックス制度の活用事例を社内報やミーティングで共有し、利用を促進する
- 導入初期に試験運用を行い、段階的に制度を浸透させる
7. 職種によっては適用が難しい
フレックスタイム制度は、オフィスワークやリモートワークが可能な職種には適していますが、製造業・医療・接客業・物流業など、時間帯ごとに人員配置が必要な業種では適用が難しい場合があります。
対策:
- 適用できる職種と適用が難しい職種を明確に分ける
- 完全フレックスタイム制ではなく「時差出勤」や「シフト制フレックス」などの制度を導入
- 業務の効率化・自動化を進め、フレックスタイム導入可能な業務範囲を拡大する
フレックスタイム制度の導入を前向きに検討しましょう
フレックスタイム制度は、柔軟な働き方を実現する優れた制度ですが、適切な運用ができないと業務の効率低下や労務管理の負担増加といった問題が発生する可能性があります。導入する際には、コアタイムの設定や勤怠管理の強化、コミュニケーションツールの活用など、適切な対策を講じることが重要です。
「フレックスタイム制度を適切に運用し、組織の生産性向上と従業員の満足度向上を両立させるための取り組みを進めるにはどうしたらいいのか?」という場合には、ぜひ専門化によるコンサルティングサービスを活用することも検討してみてください。あなたの会社に合った研修を実施することで、社員と会社の未来がより明るいものになるはずです。
制度を形骸化させずに、企業文化として根付かせるためには、経営層や管理職が積極的に活用し、従業員の働きやすい環境を整えていくことが不可欠です。今後、法改正により柔軟な働き方がさらに求められる時代になります。フレックスタイム制度を上手に活用し、働きやすい環境を整えましょう!