あなたの会社では、社員が評価制度に納得し、成長を実感できていますか?
社員の成長を促進し、会社の業績向上に直結する「人事評価制度」。
しかし、実際にその効果を最大限に発揮できている企業はどれほどあるでしょうか?
「人事評価制度を導入したけれど、社員のモチベーションが下がった」
「忙しい期末に急いで査定を済ませるだけで、制度が形骸化している」
――こうした声を耳にすることも少なくありません。
なぜ人事評価制度がうまくいかないのか?その鍵は、「評価」と「育成」が分断されていることにあります。
今回は、人事評価制度の本質を見直し、社員の成長と会社の成長を両立させるための具体的な方法を解説します。
そもそも論:人事評価制度の目的とは?
人事評価制度と聞くと、多くの人が「査定」「給与決定ツール」といったイメージを持ちます。しかし、それだけが評価制度の役割ではありません。本来、人事評価制度の目的は、社員の成長を後押しし、それが会社の業績向上に結びつく仕組みを構築することにあります。
例えば、等級基準や目標設定を通じて、社員に「会社が何を期待しているのか」を明確に伝える。
そしてその期待に応えるプロセスを経て社員が成長し、結果として会社全体の成果が上がることに繋がる。
――これこそが、理想的な人事評価制度のサイクルです。
人事評価制度は単なる「過去の振り返りツール」ではありません。
経営と社員のベクトルを一致させる重要な役割を果たすため、未来の成長を描くための「マネジメントツール」であるといえます。
人事評価制度が形骸化する要因
未来の成長を描くためのマネジメントツールである人事評価制度を導入しても、効果的にサイクルを回すことができず形骸化してしまう企業が多いのはなぜでしょうか?
よく見られる課題として以下のポイントが挙げられます。
- 評価の負担が現場に集中する
評価者である管理監督者(上司)に評価や面談等で過剰な負担がかかり、普段の業務との両立が難しいため、評価が疎かになってしまう。また、評価期間だけこうした対応で忙しくなる状態に陥ることも少なくありません。 - モチベーション向上などの効果が一時的である
評価結果や査定により、昇給や賞与があったとしても、それを喜びとしてモチベーションを向上させる効果は一時的で、継続的なモチベーションアップにはつながりにくいことがあります。 - 運用の目的が正確ではない
人事評価制度が「会社として何を達成したいのか」を明示しないまま運用されると、社員は制度の意義や評価される本質を理解できず、形骸化してしまいます。
こうした課題を解決するためには、評価制度の「運用の仕方」に焦点を当て、経営層や管理監督者である上司が本気で参画していく必要があります。
人事評価制度を機能させるステップ
人事評価制度を効果的に機能させるには、以下の3つのステップを実践することが重要です。
- 要件を具体化し評価水準を明確化する
評価項目や等級基準によってどのようなポイントを評価するのか具体化し、社員に何を期待しているのかを分かりやすく伝えることが必要です。例えば、「階層別に求める能力・スキル」「行動プロセスに対する評価」などを整理し、社員が自分の役割や業務をどのような姿勢で取り組むべきなのかを理解できる状態を作ることが大切です。 - 評価と育成の連動
評価結果は終着点ではなく、社員の成長を支える出発点となります。管理監督者である上司との評価面談で明らかになったギャップを埋めるために必要な課題を擦り合わせ、育成計画や課題解決の行動計画を設定し、PDCAを回す仕組みを整えましょう。 - 継続的な運用改善
人事評価制度は一度導入してしまえば終わりというものではありません。運用の中で出てくる課題や改善点を継続的に修正し、現場で起こる事象を観察し、そこから得られたフィードバックを反映させPDCAを回し続けることが、効果を持続させる重要なファクターとなります。
こうした形で適切に運用していくことで、本来の目的である未来の成長を描くための「マネジメントツール」としての役割を果たす人事評価制度を構築することができます。
成功事例に学ぶ:評価制度の運用により定着率が向上
クライアント:工業品を製造する従業員80名程度の老舗企業
15年以上前に当時の経営陣が中心となって設定した人事評価制度はあったものの、業務の取り組み方や成果に関する考え方などの変化が生じる中で、特に新規採用した若手社員などから「なぜこのような評価結果になるのかよく理解できない」といった不満の声があり、それに伴って僅かながら離職率も増加している状況でした。
見直しの依頼時には、全てを新しい考え方にするのではなく、現行の人事評価制度の分析と課題となる点を特定しながら、社員の納得につながる制度に変更していきたいという要望があり、以下のようなポイントで改善を実施しました。
- 資格等級の基準見直し
抽象度の高い内容になっていた各資格等級に求めるスキルや取り組み姿勢について具体的な内容に落とし込みながら明文化し、社員が見て納得できる透明性のある評価基準を設定しました。 - 評価面談とフィードバック面談の実施を必須化
評価対象期間の終了に合わせて該当期間における成果と行動プロセスについて、見直しした資格等級の基準と照らし合わせて管理監督者である上司と社員とが評価について対話する機会を設けました。また、人事評価制度では絶対評価だけではなく相対的な評価も行われることから、最終的な評価結果についてフィードバックする機会も設定し、その場において、次年度に向けた期待について上司から社員へ直接伝えることを必須としました。 - 評価結果を人材育成計画や教育訓練の実施に反映させる
評価結果にもとづいて、個々の社員において伸ばしたい・補いたいスキルを確認する事により、スキルアップのための人材育成計画の構築にも反映させるよう設計しました。また、全社的に教育訓練が必要となるか否かの判断にも活用しています。
こうした点を踏まえて新たな人事評価制度を導入してから、社員も評価への納得感を高め、また、仕事における目標への達成意欲が向上したというアンケート結果も得る事ができました。管理監督者である上司としても、社員との対話によって確認しきれていなかった評価ポイント等に気づくことができたことや、具体的な内容を元に指導することができるようになったことでやりやすさを感じることができたという声もいただきました。
このような人事評価制度の見直しによる直接的な効果の他、毎年発生してしまっていた若手社員の離職者数が減少、目標達成する社員が増える=業績が向上したという効果も得る事ができています。
人事評価制度を活かすために
人事評価制度は、社員と会社がともに成長するための重要な仕組みです。しかし、制度が形骸化してしまえば、逆に社員のモチベーションを下げてしまうリスクもあります。
今回ご紹介したステップや成功事例を参考に、ぜひ、しっかりと目的を果たすことができる人事評価制度を設計していきましょう!
「評価制度を見直したいけれど、どこから手を付ければよいか分からない」という方は、ぜひ専門化によるコンサルティングサービスを活用することも検討してみてください。あなたの会社に合った制度を構築することで、社員と会社の未来がより明るいものになるはずです。
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