働きがいのある会社づくりのために

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人材定着のカギは「環境」と「関係性」

中小企業にとって「人材の定着」は、採用活動と同等か、それ以上に重要な経営課題といえます。近年は人手不足や若手人材の流動化が進み、優秀な社員を確保し続けることはますます難しくなっています。にもかかわらず、やっと採用できた人材が短期間で退職してしまうというケースは少なくありません。これは企業にとって大きな損失となり、採用コストの無駄遣いだけでなく、業務面や組織文化の面でもマイナスの影響が及びます。
では、社員が「ここでずっと働きたい」と思う会社になるためには、いったい何が必要なのでしょうか?この記事では、社員の定着率を高めるための具体的な施策を「環境」と「関係性」という2つの視点から解説します。

1. 働きやすい「環境」を整える

まずは物理的・制度的な「環境」面の整備が重要です。働きにくい職場、もしくは社員が報われない仕組みでは、いくら理念やビジョンを掲げても定着を図るのは難しいでしょう。ここでは主に「給与・福利厚生」「柔軟な働き方」「仕事のやりがいと成長機会」について、もう少し踏み込んだ視点を加えます。

1-1. 適正な給与と福利厚生の充実

社員が会社に定着するためには、まず生活が成り立つだけの報酬が必要です。大企業よりも給与水準が低くなりがちな中小企業の場合であっても、中長期的な目線で人材の定着化を考える場合、次のような工夫が考えられます。

成果に応じた昇給制度
「同一労働・同一賃金」の考え方も広まっており、給与体系の透明性と公平性は非常に重要です。定期昇給とは別に、明確な評価基準に基づく昇給・昇格制度を設けることで、社員は「頑張った分だけ報われる」という安心感を得られます。

スキルアップ支援の充実
たとえば、資格取得補助や研修費用の負担などは、企業にとっては大きな投資のように感じるかもしれません。しかし、社員の専門性やモチベーションが向上すれば、生産性や付加価値の高い業務を担えるようになり、結果的に企業にメリットをもたらします。中小企業向けの補助金や助成金もあるため、うまく活用して人材育成に繋げましょう。

健康面のサポート
「健康経営」の考え方が注目されていますが、中小企業でも人間ドックの補助やスポーツクラブの優待利用など、無理のない範囲での福利厚生を整えることは可能です。メンタルヘルス対策として、産業医やカウンセリング窓口との連携、ストレスチェック制度の活用などを進める企業も増えています。

1-2. 柔軟な働き方の導入

働き方改革関連法の施行に伴い、多様な働き方への要望は年々高まっています。中小企業は意思決定のスピードが速く、大企業よりもフレキシブルに制度を導入しやすいという強みがあるので、こうした制度を導入することは効果的です。

リモートワーク・フレックスタイム制
通勤時間の削減や、育児・介護との両立を図りたい社員にとっては大きなメリットです。ただし、在宅勤務が増えるとコミュニケーション量が減りがちなので、オンライン会議やチャットツールなどの活用、リモートワークと出社の比率などを調整してチームの連携を保ちましょう。

副業の許可
副業解禁の流れを受け、社員が社外でスキルを磨いたり、新たな人脈を作ったりする機会を得られるようにする企業が増えています。社内にない専門知識を身につけることで、企業自体の新規事業やイノベーションにつながる可能性も生まれます。

有給休暇の取得促進
中小企業でも、社員が休みづらい雰囲気を放置していると、やがて「休みが取りにくい会社」というイメージが定着してしまいます。労務管理を徹底し、有給休暇を取りやすい風土を作るとともに、業務分担や引き継ぎを適切に行う仕組みを整備しましょう。

1-3. 仕事のやりがいと成長機会の提供

給与や福利厚生だけではモチベーションが維持できない社員も多く、特に若手社員は「成長実感」や「やりがい」に敏感です。前向きな気持ちに対して、背中を押してあげられるような機会が提供できると、人材の定着化に良い影響を与えます。

社員の意見を尊重する文化
風通しの良さは中小企業の大きなアドバンテージです。週次・月次ミーティングでアイデアや課題提案の機会を設ける、チャットツールで気軽に意見を交わせる環境を用意するなど、小さな工夫の積み重ねが大きな信頼を生み出します。

ジョブローテーションやプロジェクト任命
特定の業務だけに留まらず、他部署や新規プロジェクトに挑戦できる機会を提供することで、社員のキャリアの幅が広がります。また、複数の業務を経験することで自社のビジネス全体を把握できるようになり、視野が広がるメリットがあります。

キャリアパスの明確化
将来の昇進やキャリアアップの見通しが不透明だと、社員は長期的なモチベーションを維持しにくいものです。具体的な職位や役職の要件・評価基準・必要なスキルなどを明示することで、社員の努力を方向づける指針になります。

信頼関係を築く「関係性」の強化

次に、人間関係や組織文化といった「関係性」の要素について解説します。中小企業の場合、経営者や管理職と社員の距離が近い反面、コミュニケーションが不足していたり、上司と部下の関係がぎくしゃくしていたりすると、その影響がダイレクトに伝わりやすいという特徴があります。

2-1. 上司と部下のコミュニケーションを強化

「上司との不和」が退職理由となる社員は少なくありません。小さな行き違いやコミュニケーション不足が大きな不満に発展しないよう、こまめな対話の場を設けることが重要です。

1on1ミーティングの定期実施
週に一度、もしくは月に数回の頻度でも構いません。社員一人ひとりと定期的に話す時間を作り、悩みや要望を早期にキャッチアップしましょう。マネージャー・管理職側もフィードバックスキルを身につける必要があります。

感謝の言葉を伝える習慣
ちょっとした業務の手伝いなど、当たり前に見える行動でも、上司や同僚から感謝や称賛の言葉をかけられると、社員は認められたと感じられます。こうした小さな積み重ねが、心理的安全性や承認文化を育むベースとなります。

フィードバックの質を向上
「否定」や「ダメ出し」ではなく、社員の行動を具体的に振り返りながら、改善点と良かった点の両面を伝えることが大切です。社員が自発的に成長していけるように、「今後はどうするともっと良くなるか」という建設的な対話を心がけましょう。

2-2. 社員同士の信頼関係を深める

チームワークの良い職場は、多少の困難があっても社員が支え合いながら乗り越えやすくなります。また、新人や中途社員がスムーズに組織に馴染めるかどうかは、周りのサポート体制にかかっています。

社内イベントや懇親会の開催
飲み会だけでなく、家族参加型のイベントや、スポーツ大会、ボランティア活動など、社員の趣味や興味を反映した企画を検討するのもおすすめです。普段の業務では話す機会の少ないメンバーとも接点を持つことで、職場全体の一体感が高まります。

共通の価値観やビジョンを共有
新しい業務やチャレンジを行う際、経営理念や企業ビジョンを繰り返し共有することで、全員が同じ方向を向いているという意識を強化できます。社員自身も「自分たちの仕事が会社や社会にどう貢献しているのか」を再認識しやすくなります。

メンター制度の導入
入社から半年~1年程度は、新人や中途採用者にとって「相談しやすい存在」が身近にいるかどうかが定着を左右します。信頼できる先輩社員をメンターに任命し、定期的にヒアリングやアドバイスを行う仕組みを整えましょう。

2-3. 会社のビジョンやミッションの明確化

社員が「この会社で働き続けたい」と思う背景には、企業の存在意義や理念に対する共感が必ずあります。とりわけ若い世代ほど、社会的意義や企業の姿勢を重視する傾向が強まっています。

経営理念の言語化と定期的な発信
「うちの会社は何のために存在するのか?」という問いに対する答えを、経営者自身が明確にし、定期的に発信しましょう。理念がしっかりしている企業ほど、社員のモチベーションや帰属意識が高まりやすくなります。

社員の価値観や目標とのすり合わせ
1on1や評価面談などの場で、社員のキャリアビジョンや大切にしている価値観を引き出し、それが会社の方向性とどう繋がるのかを話し合う場を設けましょう。個人の成長と企業の成長が結びつくと、社員が主体的に動きやすくなります。

社会貢献活動の取り入れ
地域イベントへの参加や環境保護活動など、「会社として社会にどのような影響を与えたいのか」を示す取り組みを積極的に行うのも一つの手です。社員にとっては、自分が働くことが社会的に意義ある行為だと感じられるため、エンゲージメントを高める要素になります。

社員に「辞めたくない」と思わせる会社を目指しましょう

人材の定着率を高めるためには、給与や福利厚生などの目に見える施策だけでなく、「人間関係の良好さ」や「職場文化の魅力」といった見えにくい要素も重視する必要があります。中小企業は大企業に比べてリソースが限られる反面、フットワークが軽く、個々の社員に寄り添いやすいという強みがあります。

  • 環境面 では、適正な給与や福利厚生、柔軟な働き方の導入、そして社員が成長を実感できる仕組みを作ることが鍵です。
  • 関係性 では、上司と部下のこまめなコミュニケーション、社員同士の強い信頼感の醸成、会社のビジョンやミッションへの共感を高める施策が効果を発揮します。

社員が「ここで働いてよかった」「これからもこの会社で働き続けたい」と思うような環境づくりをすることは、結果的に企業のブランド力向上にもつながります。また、採用力が上がり、優秀な人材が集まりやすくなる好循環を生み出すことも期待できます。
もし、具体的な導入事例や、各種助成金・補助金の活用方法、評価制度や給与設計のノウハウなど、さらに詳しい情報を知りたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。経営コンサルタントや中小企業診断士などの専門家に相談することで、自社に合った最適解を見つけやすくなります。社員が「辞めたくない」と思う会社をともにつくっていきましょう!

著者

Wisteria Gate 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士
人と組織の活性化で明るい未来を創造する人事支援の専門化。人材開発・組織開発・評価制度および賃金制度、採用ブランディング、人材育成など人事全般に関する強みを保有。数百名規模の事業会社における戦略人事・PMI・人事責任者等を経て獲得したノウハウと、製造業・商社・サービス業など幅広い分野で培った経験に裏打ちされた“現場がわかるコンサルタント”として中小企業の人事課題の解決に取り組んでいる。

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