時代が求める新たなリーダーシップ像について考える

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なぜいま「リーダーシップの再定義」が必要なのか?

近年、リモートワークやフレックス勤務の普及により働き方の多様化が加速しています。こうした変化は、従来の「強力なカリスマ性」や「トップダウン型」リーダーシップの限界を明らかにしました。
結果として、現代の組織では、「心理的安全性」「共感力」「分散型リーダーシップ」を基盤とする「共創型リーダーシップ」が求められています。この記事では、その具体的な背景や実践方法について詳しく掘り下げます。

日本企業の多くは伝統的に、「上司が指示を出し、部下が忠実に実行する」縦割りの組織構造を持っています。しかし、若い世代を中心に「働く意味」や「自己実現」、「個人の尊重」を重視する傾向が強まり、指示待ち型の働き方に疑問を持つ人が増えました。特にZ世代やミレニアル世代は、自ら考え行動することを望み、組織に対して積極的に意見を発信することを求めています。この傾向は、「心理的安全性」のない組織では定着率が低下し、生産性が下がる原因にもなっています。

また、近年では労働基準法の改正やパワーハラスメント防止法の施行によって、企業が心理的安全性を確保することが法的にも重要になりました。心理的安全性を怠ることは、企業にとってコンプライアンス上の重大なリスクを招きます。加えて、グローバルな競争環境では多様性の受容や異なる価値観を持つメンバーが協力しやすい環境づくりが不可欠となり、それを支えるリーダーシップが求められています。

トレンド① 心理的安全性を生み出すリーダーシップ

心理的安全性は、「チームのメンバーが失敗を恐れず発言や挑戦ができる環境」のことです。Googleの研究である「プロジェクト・アリストテレス」によれば、チームのパフォーマンスには「心理的安全性」が最も重要であると示されています。心理的安全性が高い組織ほど、革新的なアイデアが生まれやすく、課題発見や解決の速度が向上します。

心理的安全性を高める方法として、リーダー自身が「わからないこと」を素直に認め、部下から積極的に意見を求めることがあります。また、ミスを責めるのではなく、それを学習機会として位置づけることで、メンバーが失敗を恐れず挑戦できます。さらに、小さな提案や意見でも真摯に評価し、実際に採用することで、メンバーの主体性が促進されます。 心理的安全性が高まると、メンバーの心理的ストレスが軽減され、離職率の低下やエンゲージメントの向上という副次的な効果も得られます。これにより、組織全体の士気が上がり、

心理的安全性を高める具体的な施策・方法

  • リーダーが自らオープンに
    リーダー自身が弱さやミスを認めてオープンに話すことで、メンバーも心理的に発言しやすくなります。
  • 意見・アイデアへのポジティブなフィードバック
    メンバーの小さな意見や提案も肯定的に受け止め、積極的に感謝を伝えることで、発言のハードルを下げます。
  • 失敗を学習の機会に変えるカルチャー作り
    ミスが起きても責任追及するのではなく、メンバーと共に原因を分析し、次に活かすことをチームの文化として定着させます。
  • 意見交換の場を意識的に設定
    雑談を推奨するチャットルーム、日常的なフィードバック会、率直な意見が求められる定期的な振り返り会議を制度化します。

トレンド② 共感力を持つリーダーが信頼される理由

リモート環境では対面コミュニケーションが減り、メンバーの気持ちや状態を察することが難しく、リーダーの共感力(エンパシー)が求められます。Gallup社の調査によれば、共感力の高いリーダーの下では、メンバーのエンゲージメントや満足度が高まることが証明されています。

共感力を磨くには、アクティブリスニングの技術を身につけ、メンバーの話に集中して感情を理解しようと努めることが重要です。定期的な1on1ミーティングを設定し、メンバーが個人的な悩みや課題を安心して話せる環境を作ることも効果的です。また、リーダーがフィードバックを行う際には、メンバーの感情や気持ちを具体的に伝えることで信頼関係が深まります。
共感力を発揮するリーダーがいる組織では、メンバーが心理的に安定し、自ら積極的に行動する傾向が見られます。結果として組織のパフォーマンスが安定的に向上し、困難な状況にも対応しやすくなります。

共感力を発揮する具体的な方法・施策

  • アクティブリスニング(傾聴)の習慣化
    相手の話を中断せず、最後までしっかり聴き、適切な質問で理解を深める習慣を身につけます。
  • 感情を重視した1on1ミーティングの導入
    個別ミーティングでは仕事の成果や進捗だけでなく、「最近の気持ち」「困っていること」など感情面を優先的に尋ねることをルール化します。
  • 感謝と共感を言葉にする
    「頑張ってくれてありがとう」「あなたの気持ちがよくわかります」などの言葉を積極的に伝え、信頼関係を構築します。
  • オンラインでも感情を伝える工夫
    メールやチャットに絵文字や簡単なリアクションを添え、感情が伝わるコミュニケーションを心がけます。

トレンド③ 分散型リーダーシップの導入

変化の早い時代、従来の一元的な意思決定では迅速な対応が困難です。このような環境では、トップに意思決定を集中させる従来のリーダーシップは限界を迎えます。そこで注目されるのが「分散型リーダーシップ」です。これは、リーダーが特定の人物に限られるのではなく、チームメンバーそれぞれが状況に応じてリーダーシップを発揮する形態です。

分散型リーダーシップを促進するには、チーム内で各自の役割や責任範囲を明確化し、意思決定プロセスを透明化することが必要です。また、リーダーシップを発揮したメンバーを積極的に評価し称賛することで、さらなる主体性や責任感を育成できます。結果として、組織全体の柔軟性や機動力が高まり、不確実な状況にも迅速に対応できるようになります。
さらに、分散型リーダーシップが普及すると組織内での人材育成が活性化し、次世代リーダーの育成が加速します。これにより組織の持続可能性が高まり、長期的な競争力も維持できます。

分散型リーダーシップを促進する具体的施策・方法

  1. 役割の明確化と委譲
    役割と意思決定の権限を明確化し、メンバーが自ら判断できる範囲を広げます。
  2. 意思決定プロセスの可視化
    意思決定を行う際のルールや基準を共有し、判断が透明で納得できるものになるよう意識します。
  3. 小さな成功体験の積み重ね
    メンバーがリーダーとしての成功体験を積めるよう、小さなプロジェクトを任せ、その結果を積極的に称賛し評価します。
  4. アジャイル型マネジメント手法の導入
    スクラム等のアジャイルマネジメントを導入し、柔軟な組織運営を実現します。

リーダー自身の「学び続ける姿勢」がカギ

新しいリーダーシップは生まれ持った才能ではなく、後天的に身につけることが可能なスキルです。新しいリーダーシップを実践するには、リーダー自身の継続的な学習が欠かせないため、変化する環境に適応できる柔軟なマインドセットを醸成する必要があります。

継続的な学習促進の具体策

  • 外部講師を招いたリーダーシップワークショップの定期開催
  • 越境学習(他部署・他企業との交流・副業制度)で外部の視点を取り入れる
  • 360度評価やフィードバックを制度化し、自己認識を高める仕組みを導入
  • ピア・ラーニング(同僚同士の学び合い)の場を設定し、組織内の集合知を活用する

共創するリーダーシップが組織の未来を拓く

従来の「指示・管理型リーダーシップ」から、「共創型リーダーシップ」への変化は時代の必然です。企業は単なる研修に終わらず、必要に応じて、外部の専門家やコンサルタントの知見を取り入れながら、段階的に実際の行動変容に結びつけるような施策を長期的視野で整備しましょう。

  • 心理的安全性を重視したコミュニケーション習慣の構築
  • 共感力の醸成を支援する人材育成施策
  • 分散型リーダーシップを促進するマネジメント手法の導入と展開
  • リーダー自身が継続的に学ぶ環境整備

企業は組織全体で新しいリーダーシップを共有し、こうした施策を企業全体で浸透させ、現場の実践と結びつけることでメンバーと共に育成を進めていくことが重要です。そうすれば、組織全体のパフォーマンスが高まり、変化に強く持続可能な企業へと進化します。
「共に考え、共に行動するリーダー」の育成を推進し、未来を見据え、今こそ新しいリーダーシップ育成に本気で取り組むべき時ではないでしょうか。

著者

Wisteria Gate 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士
人と組織の活性化で明るい未来を創造する人事支援の専門化。人材開発・組織開発・評価制度および賃金制度、採用ブランディング、人材育成など人事全般に関する強みを保有。数百名規模の事業会社における戦略人事・PMI・人事責任者等を経て獲得したノウハウと、製造業・商社・サービス業など幅広い分野で培った経験に裏打ちされた“現場がわかるコンサルタント”として中小企業の人事課題の解決に取り組んでいる。

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