従業員エンゲージメントを高める方法

エンゲージメントが高い職場の成長し続ける理由

「従業員のエンゲージメントが高い企業は業績が良い」と耳にしたことはありませんか?
近年、エンゲージメント(従業員の仕事や会社への情熱・愛着度)が企業の競争力を左右すると言われています。実際に多くの研究や実例から、エンゲージメントの向上が生産性の向上や顧客満足度の向上、さらには企業の利益増加につながることが明らかになっています。
しかし、経営者や人事担当者にとって頭を悩ませるのは、「具体的にどのようなアクションを取ればエンゲージメントが上がるのか」という点ではないでしょうか。今回は、エンゲージメントを高めるための具体的な施策や、中小企業でも取り組みやすいポイントを詳しく解説します。

1. 明確なビジョンと価値観の共有

従業員が企業のビジョンや価値観に共感すれば、自分の仕事の意義をより深く感じられるようになります。自ら行動し、成果を出していくモチベーションへと繋がるため、結果的に生産性向上や離職率の低下にも大きく貢献します。
では、どのように従業員へビジョンや価値観を伝えるのでしょうか?

定期的な社内ミーティングや研修を通じてビジョンを伝える
たとえば月次の全社員集会や朝礼、四半期ごとの経営方針発表会など、定期的にビジョンや企業の方向性を共有する場を設けると効果的です。

経営層が率先して企業の価値観を実践する
経営者や役員が、日常業務の中で自社のビジョンや価値観を体現している姿を見せることが大切です。トップの行動が社員にとってのロールモデルになります。

社内報や動画コンテンツを活用してビジョンを浸透させる
紙やデジタルでの社内報、イントラネット上での動画発信など、多角的な発信方法をとることでより多くの従業員へメッセージを届けられます。

ストーリーテリングを活用し、ビジョンに感情的な結びつきを持たせる
会社がどのような想いで設立され、これまでどのような道を歩んできたのか。具体的なエピソードやストーリーを交えて伝えると、社員の心に響きやすくなります。

2. フィードバック文化の確立

社員が自身の成長を実感できる環境で働くことは、エンゲージメントを高めるうえで欠かせません。特に上司からのフィードバックは、部下に対して「自分の行動を見てもらっている」「成長を後押ししてもらえている」という安心感を与えます。

定期的な1on1ミーティングの実施
少なくとも月1回程度、上司と部下が20〜30分ほど時間を取り、目標の進捗や課題、キャリアに関する悩みを共有しましょう。短い時間でも、本人の意欲や不安をこまめに拾うことで、早期に問題の芽を潰すことができます。

ポジティブかつ建設的なフィードバック
良かった点と改善点を分けて伝える、具体的な事例を出して示すなど、フィードバックの質を高める工夫が大切です。頭ごなしに否定されるのではなく、次に繋がるアドバイスを得られることで、社員は前向きに行動しやすくなります。

ピア・フィードバック(同僚同士のフィードバック)の促進
上司と部下だけでなく、同僚同士が日常業務の中で感想や学びを共有し合う文化も効果的です。互いの視点から評価やアドバイスをし合うことで、チーム全体のコミュニケーションが円滑になります。

360度評価の導入
従業員の多角的な能力や行動特性を把握できる仕組みとして、360度評価を検討する企業も増えています。ただし、一度に導入すると負荷が大きい場合もあるので、試験的に特定部門で導入するなど段階的な進め方も有効です。

3. キャリア開発の支援

従業員が自身の将来像を描きながら働ける環境は、エンゲージメントを高めるうえで大変重要です。特に若手社員ほど「成長実感」を求める傾向が強く、キャリア形成を会社がどのようにサポートしてくれるかを重視します。

スキルアップ研修や資格取得支援制度の提供
例えば、英語やプログラミングなどの研修を外部で受講できる補助制度を設ける、社内勉強会を定期的に開催するなど、具体的なアクションが効果的です。

キャリアパスの可視化と相談の機会の提供
将来的にどのようなキャリアステップを歩めるのか、具体的な役職や期待されるスキルを明示しましょう。社員が「自分はこの会社でどんな成長を目指せるのか」をイメージできるようにすることが大切です。

社内公募制度やジョブローテーションの導入
社員自らが新しい業務やプロジェクトに手を挙げられる仕組みを作ることで、モチベーションと主体性を引き出します。多様な業務経験を積める環境は、個人のスキルアップにも直結します。

メンター制度の活用
キャリア形成に対する悩みや相談を受け止められる先輩社員を配置し、定期的にフォローアップする仕組みを整えましょう。メンター側の負担が大きくならないよう、メンティーの人数やスケジュール管理に配慮することがポイントです。

4. 働きやすい環境の整備

物理的・心理的に「働きやすい」と感じられる環境は、従業員がパフォーマンスを発揮する土台となります。単にオフィスが綺麗なだけでなく、働き方や休暇制度など、多角的な視点で環境を整備しましょう。

フレックスタイム制度やリモートワークの導入
育児や介護などの事情を抱える社員も柔軟に働けるようにすることで、離職防止や多様な人材の活躍につながります。ただし、在宅勤務が増えるとコミュニケーション頻度が下がるため、オンラインでの対話や情報共有の仕組みを同時に強化する必要があります。

快適なオフィス環境の整備
休憩スペースの充実やフリースペースの活用など、業務効率とリラックスの両立を意識したオフィスづくりが求められています。社員がリフレッシュできる場所があると、仕事への集中力も高まります。

メンタルヘルス支援やストレスマネジメントプログラムの提供
ストレスチェック制度の活用や社外専門家との連携、相談窓口の設置など、メンタル面でのサポート体制を整える企業が増えています。早期にケアが行われれば、大きな離職リスクを抑えることができます。

ワークライフバランスを意識した休暇制度の充実
有給休暇の取得率向上、計画的な長期休暇の推奨、産休・育休からのスムーズな復職サポートなど、一貫した仕組みづくりが重要です。ただし、経営の根幹である業務運用とバランスをとる工夫も忘れないようにしましょう。

ただし、あくまで企業の本質は業務を適正に運用することです。従業員のわがままに応えるだけが環境整備ではないので注意しましょう。

5. チームワークとコミュニケーションの強化

「人間関係に不満があって会社を辞める」という話はよく聞きます。エンゲージメントを高めるうえでも、職場の仲間との信頼関係が非常に重要です。

チームビルディング活動や社内イベントの実施
仕事以外の場でコミュニケーションをとる機会があると、社員同士の距離が縮まり、協力し合う土壌が育まれやすくなります。

部門間のコラボレーションを促進する施策
部署を越えたプロジェクトチームや、クロスファンクショナルなタスクフォースを組成することで、新たなアイデアやイノベーションを生むだけでなく、会社全体としての連帯感も高まります。

オープンなコミュニケーション文化の醸成
社員が遠慮せずに意見を言える場を作るために、上司は積極的に「質問歓迎」「提案歓迎」の姿勢を示しましょう。風通し
の良い職場環境は、従業員が問題を早期に共有しやすくなり、トラブルの拡大を防ぎます。

デジタルツールを活用し、情報共有の効率を向上させる
チャットツールやタスク管理ツールを導入し、いつでもどこでも簡単に情報にアクセスできるようにすると、在宅勤務や外出が多い社員でもスムーズに連携できます。

6. 報酬と評価の最適化

どれほどビジョンやコミュニケーションを大切にしていても、やはり報酬や評価に納得感が持てないと、モチベーションが下がってしまうことがあります。

成果や貢献を正しく評価する仕組みの整備
具体的な評価項目を設定し、客観性や公正性を保つことが大切です。評価基準が曖昧だと、不満や誤解が生まれやすくなります。

インセンティブ制度や表彰制度の活用
個人の達成度合いやチームでの成果など、さまざまな角度から適正にインセンティブを与えることで、「自分たちの頑張りをきちんと見てもらえている」という安心感が生まれます。

透明性のある評価基準の策定と運用
「どのような行動が高評価につながるのか」を周知することで、社員は自らの行動を改善しやすくなります。

非金銭的報酬を活用し、総合的な満足度を向上させる
給与やボーナスだけでなく、特別休暇の付与や内外のアワード推薦など、金銭以外の形での報酬を設ける企業も増えています。社員の頑張りを多面的に評価すると、職場全体のモチベーションが上がります。

7. エンゲージメントの測定と改善

エンゲージメント向上は一朝一夕には実現しません。継続的に状況を把握し、改善を重ねることが肝要です。

従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイの実施
年1回や半期に1回などの定期的なアンケートで現状を数値化し、傾向を把握します。匿名性を高める工夫をし、社員が正直に回答できるよう配慮しましょう。

結果を分析し、改善点を特定する
部署別や年代別など、切り口を変えてデータを分析することで、どこに課題があるのか明確化できます。

アクションプランを策定し、実施後のフォローアップを行う
調査結果を元に具体策を打ち出し、取り組みの効果を定期的に検証します。改善が難しい場合は、専門家に相談するのも一つの選択肢です。

エンゲージメントを向上させましょう

従業員エンゲージメントを高めるには、単に福利厚生を充実させるだけでなく、ビジョンの共有、キャリア開発の支援、評価制度の透明化など、多方面からのアプローチが必要です。特に中小企業は、大企業ほど多額の予算をかけられない場合が多いかもしれません。しかし、組織の規模が小さいからこそ意思決定が早く、柔軟に制度を導入しやすいという強みがあります。
まずは「自社でいま何が課題なのか」を明らかにするために、現場の声に耳を傾け、データを活用しましょう。小さな施策からでも着実に取り組みを進めていくことで、社員が「ここで働きたい」「成長していきたい」と感じられる企業文化を育むことができます。

「エンゲージメントを向上させたいけど、自社でどう取り組めばいいのかわからない」「会社が一方的に施策を押し付けるのではなく、社員の主体性も引き出したい」という方は、ぜひ専門家によるコンサルティングや研修の活用を検討してください。外部の視点を取り入れることで、社内だけでは気づきにくい課題を洗い出し、最適な解決策を導くきっかけになります。
エンゲージメントが高い職場は、経営者や人事担当者だけでなく、社員一人ひとりにとっても多くのメリットがあります。働き甲斐や自己成長を感じられる環境は、結果的に顧客や社会への価値提供にも繋がるのです。これからの時代を勝ち抜くためにも、ぜひエンゲージメント向上への取り組みを推進してみてください。

著者

Wisteria Gate 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士
人と組織の活性化で明るい未来を創造する人事支援の専門化。人材開発・組織開発・評価制度および賃金制度、採用ブランディング、人材育成など人事全般に関する強みを保有。数百名規模の事業会社における戦略人事・PMI・人事責任者等を経て獲得したノウハウと、製造業・商社・サービス業など幅広い分野で培った経験に裏打ちされた“現場がわかるコンサルタント”として中小企業の人事課題の解決に取り組んでいる。