40代はどこへ行ったのか?中堅人材不足の実態と解決策

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40代の人材層が薄いのはなぜだろうか

近年、企業の成長を支える中間層、とりわけ「40代の人材が足りない」と嘆く声が中堅・中小企業で増えています。
中堅・中小企業では比較的顕著にこうした傾向が見られ、即戦力として期待される40代社員の不在が企業の発展に影を落としている状況です。しかし皮肉なことに、総務省の統計(令和3年)では日本の40代人口は約1,790万人と20代(約1,264万人)や30代(約1,391万人)より多いのです。

そうすると・・・「40代はどこへ行ったのか?」

 本記事ではこの疑問に答えるべく、40代中堅人材の不足原因と影響、そして対策までを順に解説します。

40代 中堅人材の役割と重要性とは

企業における40代は一般的に中堅・ミドルマネジメント層にあたり、経験年数15~20年程度の働き盛りの世代です。
日本の労働生産性は年代別に見ると40代でピークを迎えるとの研究結果もあり、この世代は知識・経験が豊富で生産性が高く、「組織の要」ともいえます。

現場のリーダーや課長級として経営陣と若手をつなぎ、チームを牽引する橋渡し役を担うことが多く、暗黙知の伝承や若手育成にも欠かせない存在です。つまり40代中堅人材が不足するということは、組織のエンジンともいえる層が薄いor不在である状態を指し、企業運営に様々な歪みを生じさせます。

40代 人材不足の背景と原因

ではなぜ、多くの40代が存在するはずの日本で「40代人材不足」が起こるのでしょうか。その背景には以下のような複合的要因があります。

就職氷河期と採用抑制の影響

1990年代半ば~2000年代前半の長期不況期(いわゆる就職氷河期)に、多くの企業が新卒採用を大幅縮小しました。さらに2008年のリーマンショックでは大規模なリストラが断行され、当時働き盛りだった世代が失業や非正規化を強いられています。この時期に十分なキャリアを積めなかった氷河期世代(現在の40代前半~50代前半)が後年になって組織の中核層に薄さをもたらす一因となりました。

組織の年齢構成のいびつ化(「砂時計型」組織)

上記の採用抑制により、多くの企業で現在の40代~50代前半層が極端に少ない、いわゆる空白の世代となっています。一方で、その上の世代(50代後半~60代)と下の世代(20~30代)は比較的多いため、組織の年齢構成が上下だけ膨らんだ砂時計型になるケースが増えています。
このギャップは企業によっては「現場を支える40代生え抜き社員がいない」という形で表面化し、年功序列型組織だった企業ほど中間層不在の弊害が出やすくなっています。

中堅人材の流出(ミドルの転職増加)

人材市場の変化も見逃せません。近年は転職が一般化し、特に30代後半~40代の中堅層がキャリアアップや柔軟な働き方を求めて大企業や外資へ流出するケースが増えています。
人材採用会社の調査によれば、2024年の正社員転職率は7.2%と高水準で、中小企業では条件の良い企業へ人材が移ることで40代ポジションが埋まらない状況が続いているのです。事実、ミドル世代(40~59歳)の転職者数はこの10年で約6倍に増加したとのデータもあり、転職市場における「35歳限界説」は過去のものとなりました。
優秀な40代人材ほど市場で引く手あまたで、2024年には40代転職者の52%が年収アップを実現したという報告もあります。中堅・中小企業にとってはこの流動化への対応が急務です。

採用難と若手不足

少子高齢化による人手不足自体は全産業共通の課題ですが、とりわけ中小企業では若手採用が慢性的に難しくなっています。待遇面・知名度で大企業に劣るため新卒や20代人材を十分確保できず、結果として社内に残った中高年に依存する構造になりがちです。
実際、多くの中小企業で従業員の半数以上が45歳以上という逆三角形の年齢構成になっており、「貴重な中堅が辞めたら代わりがいない」状態に陥っています。

経営陣の人材戦略ミス

耳の痛い話ですが、中堅がいない背景には、経営側の中長期的視点の欠如も指摘できます。リーマンショック期の採用控えが今になって響いているとも言えますが、当時から人材育成の重要性を見落としていた結果でもあります。
また「教育はコストだ」と捉え短期利益を優先したり、「若手を叱咤激励すれば成長するだろう」と場当たり的に済ませてきた企業も散見されます。こうした方針では組織の中核となる人材は育たず、せっかく入社した若手も成長前に離職してしまいがちです。

以上のような要因が重なり合い、「40代が社内にほとんどいない」「中間管理職層がスカスカ」という企業が生まれているのです。

40代 中堅不在のリスクとは

中堅層が薄い組織では、現場と経営の間に大きなひずみが生じます。ここでは40代中堅が不在の場合に起こり得るリスクを整理し、逆に中堅層が機能している組織との違いを比較します。

コミュニケーション断絶と戦略不徹底

経営トップのビジョンや指示が、そのまま現場に丸投げされる形になりがちです。本来、中堅が咀嚼して「なぜやるのか」「どう進めるか」を現場に伝えるべきところ、中継役不在では現場は十分に理解できず、戦略が実行段階で空回りします。
また現場の生の声や顧客ニーズが経営に上がらず、イノベーションの種が埋もれてしまう恐れもあります。

若手の育成停滞・流出

お手本となる先輩や指導役が不足するため、若手社員の成長機会が限られます。その結果、自発的な学習意欲が低下し、せっかく育ちかけても不満から転職してしまうケースが増えます。
昨今の売り手市場では、若手はより成長できる職場へ移りやすく、中堅不在→若手流出→さらに中堅不在という悪循環に陥りかねません。

経営者の負担増大

橋渡し役がいないことで、経営者自ら日々の現場マネジメントや意思決定の細部にまで関与せざるを得なくなります。本来トップが注力すべき戦略立案や対外折衝に時間を割けず、舵取りが忙殺される状態です。
優秀な経営者なら短期的には回せても、長期的にはトップ一人に依存した組織では限界が来て停滞・衰退を招きかねません。

組織文化・ノウハウの断絶

暗黙知(経験から得たノウハウや社風)を理解し、次世代に伝える世代がいないと、企業の理念や価値観が形骸化していきます。ベテランが築いた良き文化が若手に継承されず、現場と経営者の感覚も乖離し、組織の一体感が薄れてしまいます。
とりわけ今の50代が定年で抜けるタイミングで実績ある40代が社内にいないと、彼らの持つノウハウや人脈を引き継ぐ後継者不在となり、事業継続リスクが一気に高まります。

以上のように、中堅不在の組織は「現場と経営の間がスカスカ」な状態となり、戦略浸透から人材育成、事業承継に至るまで様々なリスクを孕みます。
一方で、40代を中心とした中堅層がしっかり育ち機能している組織はこれらの逆を行きます。経営と現場のギャップを埋めて全社のベクトルを揃え、OJTで若手を鍛え組織全体の底上げを図り、現場の声を汲み上げて変化に対応する潤滑油となります。さらにビジョンやミッションを現場レベルで体現し、一体感ある企業文化を醸成する力ともなります。

要するに「中堅がいる組織は強い」のです。
この違いを踏まえれば、40代中堅人材をいかに確保・定着させるかが企業の生命線であることがご理解いただけるでしょう。

中堅人材不足への対応

実際に、中堅人材不足に直面した企業はどのような課題認識を持ち、対応策を講じているのでしょうか。いくつかの事例やトレンドを紹介します。

  • 中堅層へのリテンション強化: とある老舗メーカーでは、ここ最近社内で30代後半〜40代の退職者が目立ち始めました。振り返ると若手向けの教育・キャリア支援施策は行っていたものの、中間層へのアプローチが手薄だったことに気づいたといいます。そこで退職理由の本音をAIで分析するツールを導入し、中堅層の離職要因を洗い出して対策立案に活かすなど、ミドル世代のリテンション(離職防止)に本腰を入れ始めています。このように、若手だけでなく中堅社員のエンゲージメント向上を図ることが重要との認識が広がっています。
  • 氷河期世代の積極採用: 人手不足解消の切り札として、中途即戦力となる40~50代の採用に注目する企業も増えています。例えば大手人材企業の調査では、ミドル世代の転職者数は10年で約6倍に拡大し、企業側も「35歳限界」を撤廃して優秀な40代人材獲得に乗り出しています。実際、氷河期世代専門の採用枠を設ける企業や、ミドル層向けの求人で経験不問・年齢不問を明記する企業も現れ始めました。彼らの豊富な経験やスキルに期待し、中間管理職候補として迎え入れる動きです。転職市場でも40代の市場価値が高まっており、前述の通り転職して年収アップを果たす40代も増えています。この流れに中小企業も乗り、「今いる40代を逃がさず、外からも40代を呼び込む」発想が求められています。
  • Uターン人材の活用(地方回帰の40代): 地方の中小企業では、都市圏で経験を積んだ40代のUターン転職者に期待が寄せられています。地方企業が40代人材に求めるのは主に「専門性による即戦力」と「若手育成・牽引のマネジメント力」であり、実際に親の介護等をきっかけに地元に戻り地域企業で活躍するケースも増えています。例えば長野県のある企業では、都会の大手で培ったスキルを持つ40代エンジニアをUターン採用し、新製品開発の即戦力兼若手育成リーダーとして迎え入れています。地域では貴重な高度人材として厚遇されるケースも多く、企業側も地元出身の中堅に対し柔軟な勤務条件や家族支援策を用意して受け入れています。
  • 社内制度の見直しと育成施策: 中堅・中高年が安心して働き続けられる環境づくりも各社で進んでいます。例えばキャリアパスの明確化では、5年後・10年後にどのポジションを用意するかビジョンを示し、「経営と現場をつなぐリーダーになってほしい」と期待役割を伝えることで、中堅候補社員のモチベーションを高めた企業があります。また研修体系の充実も効果的です。現場OJTだけでなく管理職候補向けリーダーシップ研修やコミュニケーション研修などOFF-JTを組み合わせ、必要スキルを体系的に習得させる取り組みです。ある製造業では外部セミナー受講制度を拡充し、40代社員が最新のマネジメント手法を学ぶ機会を提供しています。さらに評価制度と報酬の見直しも欠かせません。中堅層が「役割が不明確」「努力が正当に評価されない」と感じていては定着しないため、成果や成長を適切に評価し昇給・昇格に反映する制度整備に踏み切る企業も増えています。例えばあるIT企業では、プロジェクトリーダーとして若手を率いた40代社員にマネジメント手当を新設し、役割貢献を処遇に反映するようにしました。
  • 柔軟な働き方と両立支援: 40代は仕事と家庭の両立課題が顕在化する世代でもあります。親の介護や子育て(教育費や受験対応など)に直面するケースが多く、この制約に企業側が配慮しないと優秀な人材を失いかねません。そこで各社、柔軟な働き方を支援する制度整備を進めています。具体的にはフレックスタイム制やリモートワーク導入、介護休暇・時短勤務の充実などで、勤務時間や場所に融通をきかせ家庭と両立しやすくする施策です。ある企業では40代社員の介護離職を防ぐため、在宅勤務と介護費用補助制度をセットで導入し、「会社に大切にされている」と実感できる環境づくりに努めています。これらは定着率向上のみならずエンゲージメント向上にも有効だといいます。
  • 中堅の経験を生かす役割設計: 社内に少数でも40代がいる場合、その活躍を促進するポジション設計もポイントです。世代を超えた混成チームを編成し、40代社員をメンターやプロジェクトリーダーに任命して若手を牽引させる、といった施策です。実績や責任感を備えた40代にとって自身の経験を生かせる場があることは働き甲斐につながり、会社側も組織力強化に寄与します。例えばあるベンチャー企業では、30代以下しかいなかった組織に40代マネージャーを中途採用し、その人物を中心に新規プロジェクトチームを発足させました。結果、若手メンバーの離職率が下がり業績向上にも貢献したそうです。「中堅にしか出せない味」を組織運営に取り込む好例と言えます。

中堅人材不足への対応策とプロの支援活用

以上の事例から見えてくるように、40代中堅人材の不足を埋めるには (1) 外部からの採用、 (2) 内部での育成・定着、両面からの戦略が必要です。即戦力となる人材の中途採用枠を拡大しつつ、今いる社員を育て離職させない環境づくりを同時に進めることが肝要でしょう。そのためには経営層のコミットメントが不可欠であり、「中堅がいない会社は将来崩れる」という危機感をもって人材投資に踏み出す必要があります。

もっとも、自社だけで制度設計や育成プログラムを整えるのが難しい場合、専門家の支援を活用することも一案です。実際、社員研修のプロや人事コンサルタントに依頼し、社内のキャリアパス設計や評価制度改革を行う中小企業も増えています。

例えば人材育成の研修サービスを提供する企業に相談すれば、自社の40代~ミドル層が直面する課題を洗い出し、必要な研修(リーダーシップ研修、メンター制度導入、コミュニケーション向上施策など)をオーダーメイドで実施してくれるでしょう。また、人事制度設計の専門家に依頼すれば、中堅層の役割定義や評価基準の見直し、報酬体系の再構築などを客観的な視点でサポートしてもらえます。外部の力を借りることで、社内だけでは気づきにくいボトルネックを発見し、効果的な施策をスピーディーに導入できる点は大きなメリットです。

最後に、40代中堅人材は企業にとって「失って初めてその重要性に気づく」存在かもしれません。しかし本記事で述べたように、40代は単なる人手以上の価値を持っています。組織の橋渡し役として不可欠であり、その不在は会社の未来を左右しかねない重大リスクです。経営者・人事担当者の皆様には、中堅人材の価値を改めて再評価し、「40代も活躍し続けられる会社作り」に舵を切ることを強くおすすめします。
それがひいては組織全体の持続的成長につながる、未来への投資となるでしょう。

著者

               門田尚也 門田 尚也

Wisteria Gate 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー(経営支援)

人と組織の活性化で明るい未来を創造する人事支援の専門化。人材開発・組織開発・評価制度および賃金制度、採用ブランディング、人材育成など人事全般に関する強みを保有。数百名規模の事業会社における戦略人事・PMI・人事責任者等を経て獲得したノウハウと、製造業・商社・サービス業など幅広い分野で培った経験に裏打ちされた“現場がわかるコンサルタント”として中小企業の人事課題の解決に取り組んでいる。

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