新年度は人事制度を見直すチャンス|中小企業が今始めるべき3つのステップ

目次

新年度に改めて制度を見つめなおす

4月は新入社員の受け入れ、組織変更、昇格人事など人事部門にとって最も慌ただしい時期です。
しかし、この忙しさの中にこそ、人事制度を見直す「きっかけ」が詰まっています。新年度は、評価サイクルの区切りであると同時に、新たな予算が動き始めるタイミング。「いつかやらなければ」と思いながら先送りにしてきた制度の見直しに着手するには、実は最も合理的な時期です。
本記事では、中小企業が新年度のタイミングで人事制度の見直しに踏み出すための3つのステップを、具体的に解説します。

なぜ「新年度」が人事制度見直しのベストタイミングなのか

人事制度の見直しに「正解のタイミング」はありませんが、新年度には他の時期にはない条件が揃っています。

評価サイクルとの一致

多くの企業は4月始まりの評価サイクルを採用しています。今年度の評価が終わった直後は、「今の制度のどこがうまくいっていて、どこに問題があるか」が最も鮮明に見えているタイミングです。この感覚が薄れる前に、課題を整理しておくことには大きな意味があります。

新年度予算の活用

外部のコンサルタントに支援を依頼する場合、費用の確保が必要です。新年度の予算編成時に「人事制度の整備」を項目として盛り込んでおけば、年度途中で予算を捻出する必要がなくなります。

人事イベントが集中する時期だからこそ

新入社員の配属、異動、昇格。これらのイベントを通じて「今の等級制度は実態に合っているか」「評価基準は管理職に理解されているか」といった課題が浮き彫りになります。問題意識が社内で共有されやすい時期だからこそ、見直しの合意形成もスムーズに進みやすいのです。

スケジュール感の目安

仮に今年度(2026年度)に制度の見直しに着手した場合、設計に6ヶ月〜1年かけて、翌年度(2027年度)の評価サイクルから新制度を適用するというのが現実的なスケジュールです。逆に言えば、今動き出さなければ、新制度の適用はさらに1年先に延びます。

まず何から手をつけるべきか

「見直しが必要だとは思っている。でも、何から始めればいいかわからない。」

実際にコンサルティング開始前の初回相談や、セミナー後のお問い合わせなどで中小企業の経営者や人事担当者から、最も多く聞く声がコチラです。人事制度の見直しは、経営観点から見ても決して小さくはない案件となります。
制度改定のプロジェクトを立ち上げる前に、まずは以下の3ステップで現状を整理するところから始めてみてください。

ステップ1:現状の棚卸し

最初にやるべきことは、「今、自社の人事制度はどうなっているか」を正確に把握することです。
以下のチェックリストで、自社の状態を確認してみてください。

  • 人事戦略や人事ポリシーが設計されているか
  • 明文化された評価制度が存在するか
  • 評価制度を社員に説明した機会があるか(入社時だけでなく、定期的に)
  • 評価結果が昇給・賞与にどう反映されるか、社員が理解しているか
  • 管理職が評価面談を実施しているか(形式的でなく)
  • 評価基準は職種や等級ごとに整備されているか
  • 制度は定期的に見直しされているか

すべてに「はい」と答えられる企業は多くありません。むしろ、「制度はあるが運用されていない」「何年も前に作ったまま放置されている」というケースの方が一般的です。
ここで大切なのは、現状を正直に把握すること。課題が見えなければ、改善の方向性も定まりません。

ステップ2:「何を変えたいか」の目的を明確にする

棚卸しで課題が見えたら、次は「何のために制度を見直すのか」という目的を明確にします。
ここが曖昧なまま設計に入ると、制度全体に一貫性がなくなり、結果として「作ったけれど誰も納得していない制度」ができあがってしまいます。
目的の例としては、以下のようなものがあります。

  • 社員の納得感を高め、離職を防ぎたい
  • 管理職のマネジメント力を底上げしたい
  • 年功的な処遇から、貢献度に応じた処遇に移行したい
  • 会社の成長フェーズに合った等級・役割の体系を整えたい
  • 採用競争力を高めるために、処遇の透明性を上げたい

目的は一つに絞る必要はありませんが、優先順位をつけておくことが重要です。経営者と人事担当者(中小企業では経営者自身が人事も兼ねているケースも多い)が、この目的を共有しているかどうかが、プロジェクトの成否を分けます。

ステップ3:自社対応か外部支援かを判断する

目的が明確になったら、「自社だけで進められるか、外部の力を借りるべきか」を判断します。
まず、自社対応が現実的なのは、人事部門に制度設計の経験者がいて十分な時間を確保できる場合です。一方で、以下のいずれかに当てはまる場合、外部のコンサルタントの活用を検討した方が結果的に早く、質の高い制度ができる可能性が高いです。

  • 制度設計は初めてで、何が「正しい設計」なのかわからない
  • 過去に制度を作ったが、運用が定着しなかった
  • 社内の人間だけでは客観的な視点が持てない
  • 日常業務と並行して進めるリソースがない

外部に依頼する場合の費用相場については、こちらの記事で詳しく解説しています。

中小企業で人事制度の見直しが進まない3つの壁と乗り越え方

「見直しが必要だとわかっている。でも動けない。」
その背景には、中堅・中小企業ならではの壁があります。

壁①:「日常業務が忙しくて手が回らない」

中小企業の人事担当者は採用も労務も給与計算も兼務しているケースが多く、実務に注力して運用することが重視されます。そのため、制度設計に集中する時間を確保すること自体が困難であり、また、制度企画など人事制度の見直しに関する知見を伸ばす機会を確保することができません。
この壁の乗り越え方としては、「すべてを自社で完結しようとしない」ことです。外部の専門家に設計のリードを任せ、社内担当者は「自社の実態を伝える役割」に集中する。このような役割分担ができれば、日常業務を止めずにプロジェクトを進めることは十分可能です。
制度設計完成後に、内製化を推進していくことで人為担当者の実務力を活かすことができます。

壁②:「社員の反発が怖い」

既存の処遇体系を変える場合、「給与が下がるのでは」「評価が厳しくなるのでは」という社員の不安は避けて通れません。一方で、人事制度が無い場合や人事制度が長年利用され続けて硬直的になっている場合も同様に社員からの不安が生まれる事になります。
この壁の乗り越え方は、「変更の目的と背景を、十分な時間をかけて説明すること」に尽きます。制度の内容そのものよりも、「なぜ変えるのか」「社員にとって何が良くなるのか」を丁寧に伝えるプロセスが重要です。
社員説明会の設計や資料作成まで支援してくれる研修経験の豊富なコンサルタントを選ぶと、この壁は大幅に低くなります。

壁③:「そもそも何が正解かわからない」

そもそも、事業活動は個々の企業により異なるように、人事制度に「唯一の正解」はありません。年功型が合う会社もあれば、成果型が機能する会社もあります。大事なのは、自社の経営方針・成長フェーズ・社員構成に合った制度を選ぶことです。
「正解がわからないから動けない」のであれば、まずは現状の課題を第三者に聞いてもらうところから始めるのも一つの方法です。課題が整理されるだけでも、次にやるべきことが明確になります。

まとめ:「完璧な制度」より「動く制度」を目指す

新年度は、人事制度の見直しに着手する最も合理的なタイミングです。
ただし、いきなり完璧な制度を作ろうとする必要はありません。まずは現状を棚卸しし、目的を明確にし、自社で対応するか外部の力を借りるかを判断する。この3ステップを踏むだけでも、「何をすべきか」が格段にクリアになります。

完璧な制度を追い求めて動けなくなるよりも、「まず現場で動く制度」を目指す方が、結果として組織にとってプラスになります。課題が整理されていない段階でも、お気兼ねなくご相談ください。貴社の状況をお伺いしたうえで、最適な進め方を一緒に考えます。

当事務所では、人事評価制度の設計・導入から運用定着まで、プロジェクト型支援と提携パートナー契約の両方でご支援しています。参考価格はこちらのページでご覧ください。

*無料相談は毎月社数を限定させていただいております

著者

               門田尚也 門田 尚也

Wisteria Gate 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー(経営支援)

人と組織の活性化で明るい未来を創造する人事支援の専門化。人材開発・組織開発・評価制度および賃金制度、採用ブランディング、人材育成など人事全般に関する強みを保有。数百名規模の事業会社における戦略人事・PMI・人事責任者等を経て獲得したノウハウと、製造業・商社・サービス業など幅広い分野で培った経験に裏打ちされた“現場がわかるコンサルタント”として中小企業の人事課題の解決に取り組んでいる。

目次